きっと、君を離さない



「じゃあ、行こうか」

「・・・どこに?」

「大石が、待ってるところ」




そう促され、渋々動き出した。
なぜ、悠斗が迎えに来ないのか。
その理由を考えていた。




「・・・ケンカしたって」

「ん?ああ・・・。聞いた?」

「はい。・・・私の、せいですよね?」




悠斗と彼女が別れた原因が私というなら、きっとそのことについてだろう。
彼は、悠斗の彼女の事を大切に思っている様だったから。




「・・・菜緒は、俺が大石に紹介したんだ。俺と大石は小学校から仲良くてさ。高校で離れたけど、大学でまた同じになって」

「はい」

「高校の時に出会ったのが菜緒。まっすぐな子でさ、あいつにはお似合いだって思った。案の定紹介してすぐトントン拍子に付き合い始めて。嬉しかったんだ」




思い出すように空を見上げながら草太は話す。
その言葉は私に向けられているものなのか、少しずつ分からなくなってくる。
それくらい、草太は思い出の中に入り込んでいった。



「俺の大切な友達が幸せになっていく。それが、凄く・・・」




今なら、少しだけわかる気がする。
私も理恵が幸せになれば、きっと同じように感じただろう。






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