きっと、君を離さない



簡単に「好きだ」なんて言えないし。
言ったところで、口先だけのように思えて。

決してそんなつもりはないのだけど。




「でも、池内だっていいのかよ」

「俺は、・・・あいつにとってその程度ってことだろ」

「その程度って、それで吹っ切れるもんか?」

「ふっきれなくたって、どうしようもないだろ」




確かにそうなのかもしれないけど。
池内によれば、携帯も解約したのか繋がらないらしいし。




ふと、思った。
それってもしかして、春香も同じなんじゃないか。




春香も、理恵と連絡が取れなくなったってことなんじゃ・・・。




言いようのない不安が胸をよぎる。






「池内、俺、行ってくる」

「んあ?ああ・・・いってらっしゃい」





池内は何も聞くことも、引き止めることなく俺を送り出す。
きっとどこに行くのかも、見当はついているはずだ。

最近の池内は、すっかり俺の背中を押してくれる。
どういう心境の変化かはわからないけど、菜緒を説得してくれたのも池内らしい。




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