きっと、君を離さない
「・・・繋がらないの・・・もう・・・私、いらないんだって」
「おい、春香!しっかりしろ!」
言葉の端々から、きっと理恵のことを言っているんだろうことはわかった。
池内が言っていた繋がらない電話の事。
きっと、春香もそうだったんだ。
理恵は、春香の事も切り捨てたのか?
「もう・・・いらないんだって・・・」
「違うよ!いらなくなんてないから!」
明らかに様子はおかしかった。
春香は、いつも気が強くて誰も寄せ付けないような鋭さがあって。
最近は俺の前では少し丸くなってたけど、なかなか心を開いてはくれなくて。
でも、目の前にいる春香は、いつか見た弱々しい子供のような春香。
酷く怯え、苦しむ姿が胸にいたい。
「春香は、いらなくなんてないから!」
なんと言えば伝わるだろう。
こんなにも、俺には春香が必要なのに。
伝わらない想いがもどかしい。
叫ぶしかできない自分が、情けなくて。
いらない人間なんていない。
いつもなら、そんなことは偽善だと蔑むだろう言葉を口にして。
春香が救われるわけがないのに。
俺は、そう叫び続けるしかできない。