きっと、君を離さない



「いっただきまーす!」

「・・・いただきます」



あまり納得がいっていないような春香を差し置き挨拶をすると、春香も諦めたのかそう言ってスプーンを持った。
俺はそれを眺めながらチャーハンを口に運ぶ。




「・・・んぐ!」




か、からっ!




「ちょっとタンマ!ごめ!失敗!辛くて食べれたもんじゃないから、やり直す!」





慌てて春香の手を止めようとする。
しょうゆを入れすぎたらしい。
というか、味見ぐらいしろよ俺!
最低だ、張り切って作って大失敗。


凹みながら春香を見ると、春香は手を止めることなくそれを口に運んでいた。



「あ!だから!」




もぐもぐと、咀嚼する彼女を眺める。
すると、春香は二口目を口に運んだ。




「ちょっと、え、いいって!食べなくて、いいよ。ほんと」

「・・・おいし」

「え?いや、そんなわけないよ。めっちゃ辛いでしょ」


食べられないことはないけど、絶対に美味しいものではない。
でも、春香はスプーンを止めることなく進めていく。



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