きっと、君を離さない
ポタ、と滴が落ちる。
それが涙だと気付くのに、そう時間はかからなかった。
春香の身体が、震えていたから。
泣きながら、その手は止めることなく口にスプーンを運んでいく。
「春香・・・?」
「・・・っ」
「そ、そんな辛いなら・・・やめたらいいからさ・・・ごめん」
春香の手に自分の手を重ねて止める。
すると、春香は俯いたまま首を横に振った。
「春香・・・?」
「違う・・・。嬉しかっただけ・・・」
ぽつりと呟くようにそう言う。
俺は、口をあんぐりとあけ情けない顔をしていたと思う。
嬉しかったから、最後まで食べようとしてくれたってこと?
俺は嬉しくて、口元が緩みそうになるのを必死でこらえた。
春香は最後まで完食してくれ、俺も最後まで食べた。
食べた後には、「喉が渇いた」「口の中がまだ辛い」といつもの文句を言い出したけど、それでも今の俺にはそんな言葉全然堪えなかった。
素直じゃない彼女の、ちょっとだけ素直な心を覗けた気がしたから。
「帰るね」
「・・・うん」
「大丈夫?」
「子どもじゃないんだから、平気」