きっと、君を離さない
「・・・少し、話辛い話なんですが・・・」
「はい。教えてください」
春香の事なら、なんでも聞きたい。
「・・・リストカットの傷ですが、今回の者だけではなく、古い傷跡がいくつかありました」
「え・・・」
「とても小さく、よく見ないとわからない傷跡にはなっていますが」
気づかなかった。
春香と出会ったのは秋になって長袖になってからだったし。
春香が隠すような素振りをしたこともなかったし。
「それと・・・」
医師がとても言い辛そうに続ける。
「春香さんの身体に、・・・おそらく、虐待ではないかと思われる傷跡がありまして」
「虐待・・・?」
「主に背中など見えない場所ですが・・・。煙草を押し付けられた跡も・・・」
頭の中がグルグルと廻る。
くらくらして、意識が遠のいていきそうになる。