きっと、君を離さない



“あんたなんかにわかるわけない”




春香が言った通りだ。
わかるわけなかった。


俺なんて、恵まれた家庭に育って。
人並みの悩みや苦しみの中ででも、疑うことを知らずに生きてきた。
いつも周りには愛が溢れていて。
それが、当たり前のようにも思ってた。



そんな俺に、彼女のなにがわかってあげられたんだろう。




そんな俺の言葉が、彼女の心に響くわけないのに。






「春香の側にいたい・・・支えになりたいって、口でいうのは簡単だよな・・・」

「お前はよくやってるよ。そのことは、春香ちゃんだってよくわかってるはずだ」

「俺がしてたのは、ただの自己満足だ・・・。俺は、春香の本当の苦しみをわかってなかった」

「全部わかろうなんて、無理だ。お前も春香ちゃんも別の人間なんだから。お前がそれに責任を感じることなんてないんだ!絶対に、違うから」





池内が、俺の身体を壁に押し付ける。
力強い表情と声で、喝を入れられる。




ああ、俺は大馬鹿だ。
こんないじけて自暴自棄になったって、春香が笑顔になれるわけじゃないのに。







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