きっと、君を離さない
1年後。
私は、高校を卒業し本格的に江梨子さんのスナックで働いていた。
自分がしたいことがわからなくて、進学も就職も考えられなかった。
お金もないから、やりたいこともないのに進学はできないし。
ずっと、自分がしたいことはなんなのか考えて来たけどいまだに応えは出ないまま。
「んー、冷蔵庫はこれくらいかなー」
私の隣で唸りながら電化製品を選んでいるのは、悠斗。
悠斗は相変わらず私の側にいてくれている。
ずるい私は、あの日の返事をいまだに返せていない。
今更それを掘り返すのも、とうじうじしていたらなにも言えないまま。
でも、私の中で悠斗が特別な存在であることは間違いない。
悠斗の気持ちは、あの日以来きちんと聞いたことはない。
でもそれは、ずっと側にいてくれることで示してくれてるってことはわかってる。
相変わらず臆病な私。
「春香はどう思う?」
「ひとり暮らしならこれくらいでいいんじゃないの?自炊するの?」
「んー、金もないからなるべく自炊はしたいんだけどな―、現実できるかどうかは置いといて」
悠斗は、大学を卒業し社会人になった。
お金を貯め、ようやく一人暮らしをすることに決めたらしい。
社会人になって会える時間も以前と比べてずいぶん減った。
一年目で新しい環境に慣れるまで、しんどそうな彼をずっと見てきた。