きっと、君を離さない



一人暮らしは職場の近くでするから、私が住んでいる場所から駅三つくらい離れる。
今も、そんなに近いわけじゃないけど、さらに遠くなる距離に少しだけ寂しさを感じている。


そんなこと、悠斗には言えないけど。




「じゃあ、こっちにしよ」

「うん。あとは何がいるの?」

「あとはー・・・。炊飯器は友だちがくれるって言ってたからいらないし。あとは、掃除機とか細かいもんかなー」




こんな風に一緒に電化製品を選んでいると、まるでカップルみたいで錯覚する。
違うのに。
別に、一緒に住むわけでもないのにバカみたい。





「春香、今日は付き合ってくれてありがとな」

「別に、暇だったし」




私の可愛げのない態度は相変わらず治らない。
それでも、ニコニコしている彼も相変わらずだ。




「一人暮らしはじめたら、いつでも遊びに来てくれていいからな」

「・・・うん」

「寂しくなったらいつでもおいで」

「バカじゃないの」




恥ずかしげもなくそんなことを言う所も、相変わらずだ。





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