きっと、君を離さない
「今まで、どんな人と出会っても変わらなかった空気が変わったのよ」
「・・・そうかな」
「あの彼ね」
江梨子さんの瞳がきらりと光る。
相手が誰かも、見当がついている様子だ。
江梨子さんは、悠斗と面識がある。
悠斗を訪ねてきたのだと、草太が言っていた。
健太の事を江梨子さんから聞いたのだと。
健太の事があってからの私を江梨子さんは一番よく知ってる。
だからこそ、私の変化にも気づいてくれるんだ。
「・・・もう一度だけ、信じてみようって思った人なんです」
「そう。そうね、彼なら・・・きっと春ちゃんを幸せにしてくれると思うわ」
「本当?」
「ええ。私、結構あの時きついこと言ったのよ?それでも、ぶれずにずっと春ちゃんの側にいたんだもの。彼なら、大丈夫」
江梨子さんのお墨付きなら、安心ね。
「でも、この仕事続けていていいの?彼、なんて言ってるの?」
「・・・やめてほしいみたい」
「まぁ、そうでしょうね」
彼氏彼女という関係になってから、何度かその話になった。
悠斗は、私にこの仕事をしてほしくないとはっきり言った。