きっと、君を離さない
4月。
桜が咲き、春の訪れを告げる。
悠斗は社会人2年目を迎え、後輩ができたのだと喜んでいた。
そして私は・・・。
「春ちゃん、お客さんお願い」
スナックをやめてはいなかった。
悠斗には、やめたとウソをついてる。
変に心配をかけたくなかったことと、それでもやっぱり別の仕事を始める勇気が持てなかった。
悠斗を騙していることは心苦しい。
だけど、こうするしかできなかった。
弱い自分。
汚い自分。
私は、こういう生き方しかできないんだ。
「春ちゃん、いいね~、可愛くて」
「ありがとうございます」
「春ちゃんに会いたくて俺、ここ通ってるようなもんだからなぁ」
ここでの愛想笑いは、うまくなってきたと思う。
時には嫌な客もいるけれど、ここに来るお客さんはいい人が多い。
そう思えるようになったのも、悠斗がいてくれるからかもしれない。