きっと、君を離さない
「おいおい、待ちくたびれたぞ」
ドアの向こう側にいた人が声を上げる。
しゃがれ声で、たばこの臭いが鼻につく。
「よお。久しぶりだなぁ。春香」
そう言って口角をあげたその年配の男。
その不気味な笑みに、私の身体は一瞬で硬直した。
フラッシュバックのように蘇る記憶。
消し去りたい、過去。
「おとう・・・」
お父さん。
なんて、呼びたくなんてない。
この人を、そんな呼び名で呼びたくなんて。