きっと、君を離さない



理恵がそっと扉を開くと、たくさんの人がコートの中を走り回っていた。
一つのボールを追って、汗の雫を飛ばしながら。


青春、というのはこういうのをいうんだろうか。




ピピー!という機械音が鳴ると、みんなが一斉にコートの外に出てくる。
休憩に入ったらしい。




「あれ、理恵?」

「あ、草太さん!」




理恵の姿を見つけた、草太さんらしい人がこちらに向かってくる。
黒髪で、少しだけ長い前髪を横に流しているらしい(今は汗で整ってないけど)。
身長もそこまで高くなく160センチの後半くらいだろうか。
でも、とても優しそうな穏やかそうな人だ。
うん、理恵に合いそう。



「おおー!理恵じゃぁん!来てくれたんだ!」

「おわっ!ちょ、大石!重い!」



突如、草太に後ろから負ぶさる感じで登場した男の人。
この人も理恵の知り合いらしい。




「悠斗さん。お久しぶりです」




悠斗さんと呼ばれた彼は、パーマがかった栗色の髪。
おそらく、細マッチョと言うんだろう適度についた筋肉。
そして、人懐っこいクシャっとシワができる笑顔。

ああ、私この人苦手だ。



汚れを知らない、まっさらな世界に生きている人。





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