きっと、君を離さない
あまり、深くは考えてなかった。
気のせいかも、戸を閉め忘れてたのかも、眠りに落ちていく片隅でそんな事を思った。
何かが、何かが私の身体に触れた。
それでも、眠かった私は、ただの気のせいだと深く考えないでいた。
それでもそれは、現実へと私を引き戻していく。
「いやっ」
私が声を出した事で、ふっ切れたのか、その手は私の口をふさいだ。
恐怖に支配される。
大きく目を見開いて、見つめた先にいたのは、・・・父親だった。
あの時の父親の顔は忘れられない。
娘を見る視線では決してなかった。
「おとなしく、しろ」
そういいながら私の身体を舐めるように触る父親に抵抗なんて出来なかった。
その行為の意味なんてそのときの私にはわからなかったけど、怖いという感覚だけはあった。
父親が、化け物に見えた。
その後のことはあまり覚えていない。
でも、あの時私を助けてくれたのは、母親だった。
散々見放していた母親。
私は、施設へ預けられた。
あの時の、父親の顔と、荒い息。
手の動く感触が、今でも忘れられない。
私をいつまでも、いつまでも、追いかけてくる。