きっと、君を離さない
あの日から、私は眠れなくなった。
寝ると昔の事を夢に見るから。
何かを食べても胃が受け付けずすべて吐いてしまう。
それでも、私はなんとか生きていた。
悠斗はあの電話以来、本当に忙しいようで電話をくれても昼休憩の少しの時間だけ。
夜は残業続きで帰ったら寝てしまうと言っていた。
夜は、私もスナックの仕事があるから助かる。
今までは、隙を見て出てすぐに切り上げたり、寝てたことにして次の日に折り返したりしていたから。
「春ちゃん、ごめんなさい。今日1時間だけ抜けさせてほしいの」
スナックの仕事に出たら、江梨子さんが申し訳なさそうに頭を下げた。
今までそんなことなんてなかったから、私も驚く。
「私の父が、倒れたみたいで・・・。大事はないみたいなんだけど、少し様子を見に行きたくて」
「大丈夫ですか?私は、大丈夫です」
「本当?ごめんね。すぐに戻るから。何かあったら携帯に電話してね」
私にお店を任せるなんて、本当はお父さん結構危ない状態なんじゃないだろうか。
心配させまいと、そう言ってるだけで・・・。
それでも、私は1時間江梨子さんがいないスナックを切り盛りすることになった。
長いこと働いてきたから、ある程度の事はわかる。
でも、接客に関してはやっぱり江梨子さんあっての私だと思うから、不安だ。