きっと、君を離さない


江梨子さんが出かけ一人になる。
開店してしばらくはまだ客は誰もいない。



それでも30分ほど過ぎると常連さんから少しずつ客も入ってくる。




「あれ、今日ママは?」

「少し開けてるんです。でも、戻ってくるので待っていてくれると江梨子さんも喜ぶと思います」

「じゃあ、ゆっくりママを待ちながら飲もうかなぁ」




江梨子さん目当てのお客さんは多い。
江梨子さんは話も上手で聞き上手。
江梨子さんに話を聞いてもらいたいって人が多くいる。



一時間過ぎた頃、江梨子さんからもう少しかかると連絡が入った。
今のところ問題なく過ぎている。
このまま無事に終えれたらいいんだけど・・・。




そんな時、新規のお客さんが入った。
恐らくどこかで飲んできた、酔っ払い気味の客。



「ねぇちゃん、酒!なんでもいいから酒!」

「いらっしゃいませ。じゃあ、おすすめでもよろしいですか?」

「おおよ」




上機嫌のその年配の男の人は、ドカッと椅子に座る。
私はお酒を用意するとその人の前に差し出した。





「よし、じゃあ。ねぇちゃん、飲みな!」

「え?」

「ほら、わいのおごりや!」




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