きっと、君を離さない



それは、春香が俺を必要としてくれてるってことなのかな?
そうだとしたら嬉しいけれど。




「あの、それで春香はどうして・・・」

「今日、私の父が倒れてしまったので、春ちゃんに店を任せていたんです。少しの間でしたけど・・・」




江梨子さんは少し暗い表情をして話しだす。
春香は、そこで悪乗りした客に酒を飲まされたんだという。

いつもなら、江梨子さんがうまくかわしていたところだったけど、そんな江梨子さんもいなくて、春香は断りきれずに飲んでしまったらしい。




「常連さんが、教えてくれました。・・・最初は少しだったのが、次第に無茶な飲み方に変わっていっていたと」

「酒なんて、飲んだことないくせに・・・」

「ですから、酔いが回るのも早かったんでしょう・・・。心配した常連さんが声をかけると、突然叫び、倒れたそうです」





どうしてそんなことに・・・。
あれほど酒は飲むなって言った。
あれほど、この仕事はやめてほしいって言ったのに。




「春香・・・」

「すみません。私が離れていたばっかりに」

「いえ、江梨子さんのせいじゃ・・・」




俺は、わかってあげられてなかったのかな。
春香の事、わかってるようでわかっていなかったのかもしれない。








< 310 / 390 >

この作品をシェア

pagetop