きっと、君を離さない
「春香を、連れて帰ります・・・」
「店をいつまでも閉めておくわけにはいかないから、それは助かるけれど・・・。いいの?」
「はい。責任もって、俺が・・・」
やっと、彼氏に昇進したんだ。
春香の事は俺がちゃんと守りたい。
心に浮かぶモヤモヤだって、消し去れる。
春香を背中に背負いスナックを後にする。
「春香・・・。どうしてなにも教えてくれないの・・・?」
答えの帰ってくることのない問いかけを呟く。
俺の声は、深夜の繁華街のざわめきに消えていく。
いくら立場が代わっても。
春香には全然近づけていない気がして。
こうして時々思い知らされる。
春香をベッドに寝かせ、キッチンを見ると、洗い物のなにもないシンク。
三角コーナーも綺麗で、空き容器のごみもない。
春香、もしかして何も食べてないの?
いつから?
なにか食べさせなきゃ。
そう思って冷蔵庫から何とか使えそうな食材を探し、準備を始める。
一人暮らしを始めて、レパートリーは増えた。
「・・・て・・・や・・・!」