きっと、君を離さない
悠斗の手が私の手を取り、持ち上げられる。
まじまじと悠斗が見る視線の先には、うっすらとついた手首の傷跡。
これは、自分で自分を傷付けた跡。
死ぬ勇気もなくて、こんな風にうっすらと傷つけることしかできなかった。
それでも、自分が生きてるって確かめたくて・・・。
「お医者さんに、聞いてたんだ・・・」
「え?」
「春香の身体に、無数の傷があるって・・・それも、古いものが・・・」
「そうだったんだ・・・」
そっか。
それでも、私を傷付けないために黙って側にいてくれてたんだね。
「本当は聞きたかったけど、傷つけてしまいそうで・・・。どう切り出そうか迷ってたら時間だけが過ぎてた・・・情けないよな」
「ううん・・・。私が切り出すのを待っていてくれて、ありがとう」
きっと、そうじゃなかったら私、また誤魔化そうとしたかもしれない。
いい格好がしたくて。
悠斗に、ウソを話してたかもしれない。
「春香とさ、出会ってすぐのころの事覚えてる?」
「出会ってすぐ・・・?」
「ホテルに行った時の事・・・」
私が、他の男と一緒にホテルに入ろうとしてたところを止められた日の事。
私はきっと悠斗も他の男と同じ目的なんだと思ってた。
でも、悠斗は違ったんだよね。