きっと、君を離さない



「もうすぐ、帰ってくると思うんだ」

「そうなの?」

「今、結愛とデートするって張り切って出かけてるから」




とても、家庭的な人なんだ。
春香は今、幸せなんだね。

表情が優しくなった。
それだけで、それが伝わってくるの。


私の知ってる春香の表情は、もうどこにもない。





「理恵も、知ってる人だから。きっと、懐かしいと思う」

「え?知ってる人・・・?」




その言葉に驚く。
知ってる人って、学校の人?
春香と仲が良かった男子って誰だったろう?

そもそも、春香が他の人と話している姿ってほとんど見たことがない。





「ただいまー」

「たーいま―!」




そんなことを考えていると玄関の方から元気な声が聞こえた。
帰ってきたらしい。
バタバタと子どもの足音と、しっかりとした足取りの足音が近づいてくる。




「おかえりー。どうだった?」

「デート、楽しかったよねー、ゆあ?」

「うん!」



扉のところまで迎えに行った春香が対話する。
扉に隠れて、旦那さんの顔は見えない。




< 378 / 390 >

この作品をシェア

pagetop