きっと、君を離さない
「もうすぐ、帰ってくると思うんだ」
「そうなの?」
「今、結愛とデートするって張り切って出かけてるから」
とても、家庭的な人なんだ。
春香は今、幸せなんだね。
表情が優しくなった。
それだけで、それが伝わってくるの。
私の知ってる春香の表情は、もうどこにもない。
「理恵も、知ってる人だから。きっと、懐かしいと思う」
「え?知ってる人・・・?」
その言葉に驚く。
知ってる人って、学校の人?
春香と仲が良かった男子って誰だったろう?
そもそも、春香が他の人と話している姿ってほとんど見たことがない。
「ただいまー」
「たーいま―!」
そんなことを考えていると玄関の方から元気な声が聞こえた。
帰ってきたらしい。
バタバタと子どもの足音と、しっかりとした足取りの足音が近づいてくる。
「おかえりー。どうだった?」
「デート、楽しかったよねー、ゆあ?」
「うん!」
扉のところまで迎えに行った春香が対話する。
扉に隠れて、旦那さんの顔は見えない。