きっと、君を離さない


「俺にだって悩みくらいあるよ?」

「どうせ大した悩みでもないくせに!」




声を張り上げる。
通行人が、ハッとして振り返る。

ダメだ。
この人といると、ペースが乱れる。




「ここで、結構ですんで。バイトがこのあたりなので駅にはいかないんです」

「・・・そう。わかった。バイト頑張ってね」




悠斗の顔も見ないで私は走り出した。
声のトーンは落ちてたけど、あんなことを言った私を責めなかった。
高校生の反抗期くらいに思われているのか知らないけど。

初対面の年下の女にあれだけ言われたんだから言い返せばいいのに。



飲み屋街に差し掛かり、ネオンの灯りもちらほらとつき始めた。
止まることなく階段を駆け上がると、お店の中に駆け込んだ。





「わ、春ちゃん?どうしたの、そんな慌てて。変質者でも出た?」

「・・・もっと厄介な奴」

「え?なに、ストーカー?追っ払ってやろうか?」



江梨子さんが眉を寄せて階段の下を覗き込む。
私は息を切らせて、大きく息をしている。




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