きっと、君を離さない
私は手術室の前のベンチに座らされていた。
どうやってここまで歩いてきたか覚えていない。
看護婦さんが何かを話しかけてくれた気もするけど、何と言われたのかわからない。
頭がボーっとするんだ。
私は、どこにいるんだろう。
「春香ちゃん!」
ドタバタと駆け付ける足音。
そして、一度だけ聞いたことのある声。
その声に、少しだけ現実に戻る。
「あ・・・」
彼は、草太。
悠斗のバスケチームのメンバーで、理恵の想い人。
「連絡・・・入って。春香ちゃん、血だらけじゃないか。俺のパーカー羽織ってなよ」
上に羽織っていたパーカーを脱いで私の肩に羽織らせてくれる。