続犯罪彼女
「不快な思いさせて悪いな。あいつら変に権力あるから調子のってやがるんだ」

須磨さんは苦々しい顔で言った。
友人は蛇に睨まれた蛙のように動かない。友人のことを考えれば、須磨さんとは礼をして早く離れるべきなのだろう。

だけど、私は助けてくれたすごく強い須磨さんに興味を惹かれていた。

「権力って?」

「あの黒髪の父親、府議会議員なんだ。
それもまぁ、いい人でな。なんであんな息子が生まれたのかわからないくらいに」

なるほどなるほど。
だから誰も助けてくれなかったのか。
通行人達に善の心がないのではなく、自らの保身のために泣く泣く私達を見捨てていたのか。
納得はできないけど理解はできる気がする。

「えっと…須磨さんは大丈夫なんですか?」

「俺?」

「その、黒い権力で仕事辞めさせられたり、安全な生活を送れなくなるだとか」

ドラマで見た議員は、子を殴られた腹いせに殴った男の仕事を辞めさせ、度重なる嫌がらせまでしていた。

現実にそんなことがあるのかはわからないけれど、あるのかもしれない。大人の世界のことなんて私にはわからないのだから。

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