続犯罪彼女
真紅
男は、怯える視線を女に向けている。
「や、やめてくれ! 娘は関係ないんだ!」
男は必死に懇願する。
女は血に塗れたナイフを娘に向けていたからだ。
「関係ない? そんなことないよ。
あんたが親である限り、この子はずっと殺し屋の娘さ」
娘は眠っていた。それだけが幸いだ。
わざわざ怖い思いをすることはない。
「知らないとは言わせない。
誰が須磨圭吾を撃った? 」
「し、知らない」
女の投げたナイフが空を切り、男の肩に刺さった。
男は叫び声を我慢している。
「娘、殺されてもいいのかな?
私を殺すために、殺し屋が八人も集まったんだよね。その中の一人があんた。もうわかってる。
もう一度聞く。次はない。
誰が須磨圭吾を撃った?」
「ほ、本当に知らない!
俺はただ、リーダーの指示に従ってーー」
「従って?」
男は口を噤んだ。言ってはならぬことなのかもしれない。
だがそんな男の気持ちなんて、女には関係なかった。
「俺はリーダーに従って、須磨圭吾をあの場所に連れていっただけだ」
「ふーん。リーダーってのは誰?」
「知らない! 電話しかしてないんだ!
娘を殺されたくなければ従えって!」
「娘? もう一人いるの?」
「あ、ああ!」
「そっか」
女は微笑んだ。
血に濡れながら作るその表情に、男は見惚れた。
「……ならこの子も一人にならないね」
女の投げたナイフが男の眉間に刺さった。