続犯罪彼女
そして千葉に言われて向かった先は大きな家の前だった。
表札には柴田と書かれてある。
千葉は柴田家の門の前にさっきの男を寝かせた。
「相変わらずよくわからないことをするな」
「私の行動に大した意味なんてないんだから、理解しようとするだけ無駄だよ」
そう言われても気になる。
どうでもいいと自分に言い聞かせたが、それで誤魔化すのは難しかった。
「なんであいつを助けたんだ?」
「しつこいなぁ。
あいつがね、柴田賢一郎の息子だからだよ」
柴田賢一郎とは現在の警視総監のことだ。千葉の実父でもある。
つまり柴田の息子であるあの男は、千葉の腹違いの兄ということ。
「お前にも兄を殺したくないだとか、人間的な感情があったんだな」
「んー…」
千葉は言い淀んだ。
こいつは自分の感情に疎い。
喜怒哀楽くらいはわかるようだが、その感情の意味がわからないことが多い。
「よくわからないけど…もしかしたらそれもあったのかな。私にとっては数少ない肉親の一人だもんね。
一応柴田への恩返しのつもりだったんだけどね。なんだかんだ世話になったし」
恩返しに息子の視力が奪われた。
これは恩じゃなくて仇なのではと思った。
でも相手は千葉だ。殺されないだけでもましだと思うべきなのだろう。
千葉は柴田賢一郎に電話をかけた。