続犯罪彼女
「痛いでしょ? 手、離していいんだよ」

須磨は黙ったままだ。手の力は緩めない。

「すーちゃんってば。傷開いちゃってるよ」

須磨は黙ったまま。少しずつ、本当に少しずつ、千葉の体が重力に逆らっていく。

「いい加減にしてってば!
諦めてさっさと言うこと聞いてよ!」

千葉が怒鳴る。どうしても足を離してほしかった。

このままでも恐らく、須磨は千葉を上まで持ち上げることはできない。
現実はそれほど甘くはない。

ならば、この時間は不毛なのだ。不要なのだ。

ここで千葉が生きながらえている時間は須磨の苦痛へと直結する。
千葉はそれが嫌だった。

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