最後の恋の始め方
 「今後もし佑典が帰国して、理恵ちゃんと元通りの関係になっても、ずっと見守っていきたいなって」


 「それは……無理だと思います」


 「え?」


 余計な一言だったかなと考え直し、それっきり口をつぐんだ。


 「いえ。佑典はそんなに早くは戻って来ないと思いますので、私はずっとこのまま一人で頑張っていく予定です」


 「そうだよね……。数年は任期があるって佑典言ってたしね」


 「はい。これまでは佑典と一緒に過ごす未来しか考えていませんでした。だけど進むべき道は、予想通りにはいきませんでした。一人になってしまいましたが、社会人として自立していきたいなって願っているのです」


 社会人として自立、なんて嘘だ。


 今の私は身も心も和仁さんに、べったり依存し切っている……。


 「いいね、その志。でも一人で心細い時とか迷ったりした時は、絶対に俺に相談するんだよ」


 「はい、ありがとうございます」


 上手い具合に話が逸れたので、この日はそのまま話を終わらせることができた。


 ただし、これで一件落着とはならなかった。
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