最後の恋の始め方
 真夜中を過ぎても眠れないまま。


 暖房が十分に効いているとはいえ、真冬の室内は肌を晒すにはあまりに寒く。


 布団の中で厳重にタオルケットに包まった。


 窓の外は冬の星空。


 晴れた夜は放射冷却で気温が下がるので、札幌市街よりも気温が低いこの辺りは、おそらくマイナス15度くらいにまで達しているだろう。


 「和仁さん……」


 突然理恵が、僕を呼んだ。


 腕を伸ばし、肩に触れてくる。


 やはり理恵もまた、義理で体を重ねることに対し満たされないままであり、眠ることができずにいたのか。


 どうしたものか、反応に迷った。


 すると理恵は、


 「このままじゃ……、寒くて眠れません。もう一度……抱いてください」


 懇願してきた。


 あの男の存在をちらつかせて意地悪してやろうとか、じらしてやろうかなどと悪だくみしたものの。


 いい年して嫉妬に狂い続けるのも見苦しいし、何より理恵が欲しくてたまらない。


 「僕も……、もっと理恵が僕を燃え上がらせてくれなかったら、凍えたままで眠りにつけない」


 理恵の誘いに応え、向きを変えて理恵の上に体を重ねた。


 「和仁さん……」


 満足できぬまま、あきらめて寂しく一人で寝ようとしていた理恵は、唇を貪り合うだけでその身は急激に熱を帯び。


 濡れた体は蜜のように、僕を誘惑する。


 そして凍える夜の寒さを完全に忘れ去るほどに、互いを求め合う……。
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