最後の恋の始め方
 「理恵ちゃんが謝ることじゃない。俺が余計なお節介をしただけだから」


 「いえ、ご配慮には感謝しています」


 「もうちょっと時間をかけて、ゆっくり考えてみよう。理恵ちゃんの気持ちが落ち着くには、もうちょっと時間がかかるかな」


 「はい……」


 本当のことを言えない以上、こうやって隠し続けるしかなかった。


 でも、こんなこといつまでも続けてはいられない。


 流されてばかりではなく、そろそろ自分の決断で選んだ道をゆく時期に来ているのは分かっていた。


 踏み出すタイミングを推し量っていた。


 「そうだ理恵ちゃん。来週末は三連休だけど」


 「振替祝日でしたね」


 「連休の真ん中、日曜日の夜、ディナーしない?」


 「え」


 頭の中で来週のスケジュールを思い起こす。


 大学は休み期間中。


 ちょうどその日和仁さんは、またしてもイベントのため不在。


 私はまたしても、一人の週末。


 「ディナーとは?」


 「うん。取引先の人から、ペアディナー券いただいてね」


 聞けば高級ホテルの最上階レストランにて、期間限定フルコース。


 定価数万円のプランだ。
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