最後の恋の始め方
***


 「ポタージュはパンプキン、かぼちゃなんだね」


 前菜としてかぼちゃのポタージュと、小皿に少しずつ盛られた野菜とお肉の炒め物が登場した。


 「食材全て、北海道産らしいよ」


 「そうなんですね……。美味しいです」


 スープ用のスプーンで、一口飲み込んだ。


 じわっとまろやかさが染み込んでくる。


 高級だという先入観の元で口にしているからかもしれないけれど、密度が濃いというか、味わい深く感じられる。


 ……この日のディナーは、山室さんが予約等全てコーディネートしてくれた。


 招待券があるので、私たちは無料で楽しめる。


 本日は祝前日であるゆえか、店内ほぼ満席。


 ただし静かにディナーを楽しむような雰囲気の場所なので、むしろ静けさに覆われている。


 「理恵ちゃんも来てくれてよかった。こんなに美味しいディナーを楽しむ権利、無駄にしないで済んだ」


 「本当に……、ありがとうございます」


 ライス、サラダ、魚料理に続いて、牛肉のフィレステーキ。


 横には甘いマッシュポテト。


 ボリュームもあり、そう簡単にはなくなりそうもないけれど。


 貧乏性なのか、細かくナイフでカットして、少しずつ味わいながら口に運ぶ。
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