最後の恋の始め方
 再び窓から、夜の街を見渡す。


 この光のどこかにいるはずの、和仁さんの気配を求めた。


 和仁さんは今晩も札幌市内の有名なホテルで、ディナーショーを開催中。


 一万円以上の費用にもかかわらず、参加希望者は多い。


 その多くが、ファンの女性。


 若い女性から、かなりお年を召した女性グループもこぞって参加するという。


 私は一人きりの夜を過ごすはずだった。


 そこに山室さんから誘いが。


 ……和仁さんは仕事柄、留守が多くて。


 寂しくてつい、山室さんの厚意に甘えてばかりだったけど。


 このままじゃいけないとは分かってる。


 「佑典との復縁、本当に無理だと思ってる?」


 「はい……」


 「時間が経っても、やはり許せないものなのかな」


 「だからそれは違うんです。悪いのは私で」


 「……佑典も、悪いのは俺だというばかりで、それ以上は何も言わない。それ以上先に進もうともしない」


 「そうですか……」


 「先に進まないということは、逆にもう過去のこととして割り切ってもいいものなのかな。佑典も理恵ちゃんも」
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