最後の恋の始め方
***


 それからしばらくたった夜。


 僕は再び理恵を連れて、札幌市中心部に横たわる大通公園付近を訪れていた。


 根雪による雪明りと曇り空が街のネオンを吸い込んだようで、明るい冬の夜だった。


 「中途半端な優しさは、かえってこのような問題を引き起こす結果となるから。気をつけないとだめだよ」


 また山室の話題となった。


 あの夜、理恵を巡って僕と山室は一触即発に近い状態だったところに。


 そばの交差点で、辺りを散策中の通りすがりの観光客がいきなり転倒。


 しかも打ち所が悪く気絶してしまい、その後介抱したり救急車を呼んだりと大変な目に遭った。


 周囲が騒然とする中、僕も山室も観光客の介抱に追われ、理恵に関して決着をつける件は先送りとなってしまう。


 その後理恵は電話で山室に、交際できないと改めて告げていたようだが。


 僕との関係を悟られてしまった以上、何か問題が発生しなければいいけど……。


 今のところ平穏な毎日が再び訪れている。
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