最後の恋の始め方
 「中田さんのお宅ですね? こちら北海道警察の」


 中年男性の声が、警察だと名乗る。


 警察。


 突然の事態に緊張するけれど、もしかしたら最近多発しているオレオレ詐欺じゃないかと疑う。


 動揺して我を失ったら、思う壺。


 一呼吸して、ナンバーディスプレイに目をやる。


 ……表示された電話番号は、下の三桁が「110」。


 これは警察からの電話で、間違いないのだろうか。


 「どのようなご用件でしょうか」


 問い返す。


 「お宅のご主人なんですが、」


 「えっ。私、結婚していませんが」


 「こ、これは失礼しました。中田和仁さんなんですが、あなた様はどのような間柄で」


 「私はここの事務所で、アルバイト勤務している者です。中田先生が何か?」


 「中田和仁さんなんですが、町内の国道を走行中に、交通事故に遭われまして」


 「事故……?」
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