最後の恋の始め方

　｢まさか佑典のお父さんが、かの有名な写真家・水無月和仁氏だったなんて｣


　山室さんは心底驚いたようで、声のテンションが高い。


　｢山室さんも、やっぱり知らなかったんですね｣


　｢知らなかったよー。佑典ってあまり家の話はしなかったしね。親の職業も自営業とだけ｣


　｢私も最初は、そこまでしか知りませんでした｣


　｢理恵ちゃんでさえ、そうだったんだね｣


　……それから山室さんに、概略を説明した。


　和仁さんと佑典の微妙な関係について、大まかに。


　｢だから理恵ちゃん昨日のメールで、佑典に俺が事務所で見たことは内緒にしておいてほしいって言ってきたんだね｣


　｢はい｣


　｢よく意味が分からなかったから、改めて理恵ちゃんにメールしたんだけど、返信がないままで｣


　｢すみません。寝ちゃってて｣


　嘘をついた。


　本当はその時私は、和仁さんの腕の中･･･。