最後の恋の始め方
 「理恵ちゃんも今後、悩んでいることとかあったら、俺に話してくれていいから。佑典との今後とか、いろいろ」


 さっきは二人の間に、一人分の空きスペースがあったはずなのに。


 気が付いたら二人並んで座っていた。


 「佑典と付き合っている頃からずっと、理恵ちゃんは大切な友人の彼女っていうこともあり、ずっと見守っていきたいと願っていた。その気持ちは今も変わらないから」


 「山室さん」


 「特に佑典とのことは、なかなか他の人には言いにくいと思うけど。何かあったら俺に相談してね」


 「はい……」


 そう答えて、この場を乗り切った。


 ちょっと動くと触れてしまいそうな距離感が怖い。


 優しく見つめられるのも怖い。


 だから私は、この人と会っている時はどうしても、俯きがちになってしまう。
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