波音の回廊
 「なんかノストラダムスの予言とか、ノアの箱舟の話にも通じるものがありますね」


 みつ子さんの話を聞いた、率直な感想。


 「その津波の話が本当ならば、誰か助かった人はいないんでしょうかね」


 「誰か生存者がいれば、証言がもっと伝わったと思うんだけどね。おそらく島民は全滅したのでしょう」


 みつ子さんはため息をついた。


 「島民は全滅……」


 「だから島の話は、伝説になったのよ」


 みつ子さんは再び、沖合いを見つめた。


 「だけどそれは実際にあった話。私はそう信じているの。だから未だに伝承が残っているのよ」


 みつ子さんの強い口調に、私も島の実在を信じるようになっていた。


 「たまに沖合いに蜃気楼が見えるんだけど、それが当時の島の姿だとか言われているの。月が綺麗な夜に、島の残像が浮かび上がるだとか」
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