波音の回廊
 「私は優しく瑠璃を愛したい。だけど愛するあまり、壊したくなる衝動を抑えられない」


 キスが、唇から首筋に降りてくる。


 着物の衿が広がり、夜風がひんやりと感じられる。


 ……私は、拒まなかった。


 元の世界に戻ることよりも、清廉を破滅の運命から救うことが重要になっていたし。


 もしも滅びる運命ならば、清廉と一緒ならば厭わないとすら思うようになっていた。


 生きる時も、死ぬ時も共に……。


 私は覚悟を決めた。
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