波音の回廊
 するとその時だった。


 急に清廉が、重なっていた体を離した。


 私は閉じていた瞼を開いた。


 なんか様子がおかしい。


 「どうし……たの?」


 「急にめまいが……」


 清廉は両目の辺りを押さえていた。


 と思いきや、いきなりがくっと崩れて、私の上に覆いかぶさるように乗りかかった。


 「清廉?」


 それっきり反応がなかった。


 「寝ちゃったの?」


 かなり強く揺さぶっても、反応がない。


 私は心配になって起き上がり、清廉の顔を見た。


 毛皮の上に横たわった穏かな表情で、寝息を立てている。


 「清廉……」


 私は安堵のため息をついた。


 何杯飲んでも顔色が変わらないくらいに、酒には強い人だけど。


 急に酔いが回ったのだろうか。
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