波音の回廊
 「おはよう……、じい」


 「もう昼です! ていうかそんなにのんびりしている場合じゃありません!」


 じいは何やら慌てている。


 でも頭がまだ回っていない私には、そこまで考える余裕がない。


 「若様は!?」


 「ああ……、まだ中で寝ています」


 じいは部屋に飛び込んできた。


 熊の毛皮の上で、死んだように眠り続けている清廉を見て、じいはかなり焦っていた。


 「若様、若様!」


 じいは強引に清廉を揺り起こした。


 「じいか。どうしたんだ。そんなに慌てて」


 「大変でございます!」


 「何がだ」


 清廉もまだ寝ぼけていて、頭が回っていないのが明白。
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