波音の回廊
 「若様! 昨夜は何をなさったのですか」


 「何って……。瑠璃に結婚を申し込んだ」


 「ええっ、それはこの島全体に関わる重大事! ……ですが今は、問題を解決するのが先決です!」


 「問題?」


 「だから若様が、昨日、」


 「瑠璃に結婚を、」


 「いえ、その前の話です!」


 「その前……?」


 瑠璃に結婚を申し込んだ前。


 酒の勢いで……。


 (酒を浴びるように飲んだのは、父上との行き違いに腹が立って……)


 怒りに任せて酒を飲んだくれていたのを、清廉は思い起こした。


 (父上が……)


 二日酔いで頭の回転が遅いので、清廉はなかなか前後の事情が思い起こせない。


 「若様。昨日の夕方、七重さまのところに押し入ったそうですね」


 「そうだ、思い出した。七重のところに」


 言動を慎むべきだ、と忠告に出向いたのだった。


 「やはり事実だったのですか……」


 じいは顔を両手で覆った。
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