波音の回廊
 「あ、暗殺未遂? 何のことだ」


 「殿に毒を盛ったのは、若様との疑いです」


 「えっ、ち、父上に毒を!?」


 清廉は愕然とした。


 当主である父が、毒を盛られ暗殺されそうになり。


 その疑いが、自身にかけられているのだから。


 「ばかな。どんな理由で私が父上を」


 「この部屋に、残りの毒薬が隠されているらしい。それが証拠となる。探せ!」


 「かしこまりました」


 衛兵たちは、清廉の部屋を探し回った。


 「やめろ! 何を根拠に」


 清廉は衛兵たちに取り囲まれ、身動きが取れない。


 そのうち、


 「見つかりました!」


 奥のほうから声が。


 すると清廉の書物が入れられた棚の脇に、見覚えのない袋が置かれていた。


 「中身は、毒草を乾かして砕いた粉です!」


 袋の中に入っていた粉末が、バラバラと床にこぼれ散った。
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