波音の回廊
 「若様、どこへ行かれます!?」


 「決まっているだろ。父上の元へ」


 清廉は駆けつけるつもりだった。


 当主の元へ。


 そして、その周囲にいるであろう、七重を斬りに。


 「殿は昏睡状態です!」


 「何だって!?」


 「現在医師団が、懸命の治療を続けております」


 「……」


 「七重さまが当主代行として、全ての権限を掌握しております」


 水城家の掟として。


 当主に万が一のことがあった場合、嫡男がまだ幼いなど何らかの理由ですぐに家督を相続できない場合は。


 当主の妻が、任務を代行して行なう。


 「若様、抵抗なさいますとこの娘にも害が及びますよ」


 「何だと?」


 衛兵は私の喉元に、やじりを向けた。
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