波音の回廊
 「清……」


 私は急に迫った危険に、言葉を失った。


 「若様、おとなしくお堂に移動なされば、この娘は若様の館に軟禁するに留めます。ですが若様が抵抗なさいますと、この娘を人質として、牢に連れて行かなければなりません」


 「やめろ!」


 清廉は私へと向けられた刃先を食い止めた。


 「その娘は関係ない。私を連れて行け」


 「清廉!」


 清廉は衛兵に、お堂へと連行される道を選んだ。


 「清廉、行っちゃだめ!」


 私は衛兵に囲まれ、清廉を追うことはできなかった。


 「瑠璃」


 清廉は私に自重するようにと、目で告げた。


 私もまた、抵抗することによって清廉の立場を悪くするわけにはいかないので、黙っているしかなかった。
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