波音の回廊
 途中、何箇所か寄港しながら、目的地の十三湊(とさみなと)を目指していた。


 陸奥と称される陸地に沿って、北上していた時のことだった。


 船団は台風に遭遇し、姫君の乗った船と七重の船とが離れ離れになってしまった。


 姫君の船はほどなく嵐から逃れ、そのまま北上を続けた。


 だが七重の乗った船は、嵐に完全に巻き込まれ……。


 船の操舵も不能に陥り、ただ波風に揺られるがままに海上を漂い続けた。


 数日間、そんな状態が続いた。


 船酔いで倒れる者。


 揺れで甲板から海中へと放り出される者。


 七重もまた、絶え間なく降り注ぐ海水や揺れに耐えながら、ただひたすら生を祈り続けた。
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