波音の回廊
(あの時の地獄を思えば、私にはもはや、恐れるものなど何もない)
七重は当時を振り返る。
命が助かるなら、何だってできると思った。
どんなことをしてでも、生き延びて見せると誓った……。
やがて嵐は静まり、夜明けの空に水城島が浮かんで見えた時の喜びは、この上ないものだった。
それから何年が経っただろう。
隣に横たわる十歳年下の清明を見つめながら、七重はふと数えていた。
「七重」
清明はそっと七重を引き寄せた。
「いくら清廉が父殺しだといっても、俺が家督を継ぐことに関して、島民に反感持たれないかな?」
「なぜ反感を?」
「だって俺の母親は、名もない島の女だし。清廉の生きている限り、俺は兄であろうとも下位に位置し続ける」
七重は当時を振り返る。
命が助かるなら、何だってできると思った。
どんなことをしてでも、生き延びて見せると誓った……。
やがて嵐は静まり、夜明けの空に水城島が浮かんで見えた時の喜びは、この上ないものだった。
それから何年が経っただろう。
隣に横たわる十歳年下の清明を見つめながら、七重はふと数えていた。
「七重」
清明はそっと七重を引き寄せた。
「いくら清廉が父殺しだといっても、俺が家督を継ぐことに関して、島民に反感持たれないかな?」
「なぜ反感を?」
「だって俺の母親は、名もない島の女だし。清廉の生きている限り、俺は兄であろうとも下位に位置し続ける」