波音の回廊
 その時だった。


 お堂を取り囲む垣根の向こうで、誰かがワーワー騒いでいる。


 「こらっ。じじい、待たんか!」


 衛兵が慌てた声を出している。


 (じい……?)


 どうやらじいが、衛兵の側を強行突破して、このお堂へと向かっているようだ。


 (あの慎重なじいが、なぜ?)


 清廉は窓から外の様子を確認しようとするが、そこからは見えない。


 何が起きているのか分からない。


 すると……。


 「若様、若様ー! お逃げください!」


 じいが切羽詰った叫び声を挙げる。


 「大変です! すぐにお逃げください!」


 「じい、どうしたんだ?」


 清廉は不安になり、戸を揺さぶったものの、当然鍵が掛かっており開かない。
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