波音の回廊
 「切腹だって?」


 「そう、お前はこのお堂で腹を切るんだ。父上を殺そうとした罪を悔いて」


 「冗談はよしてくれ!」


 「罪を悔いるために切腹を勧めに来たじいを、逆上したお前が斬り殺したという話も付け加えようか?」


 「私が……じいを?」


 「いずれにしても、お前はここで死ぬんだ。あくまで自害を拒むなら、俺が断罪の一撃を加えるという筋書きだ」


 「清明……!」


 無実の罪で、自害したりみすみす斬られるわけにはいかない。


 生きてここを出なければならないのだから、そのためには。


 ……清廉は素早く床の小刀を拾い上げ、清明に対峙した。


 このお堂に閉じ込められる際、護身用の刀も全て取り上げられていたので丸腰だった。


 迫り来る清明の危機から身を守るには、その小刀を拾うしかなかった。


 「ほう、俺に立ち向かう気か」


 清明は冷たく微笑んだ。
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