波音の回廊
 さっと目を拭いて、視界を取り戻そうとしたものの、右目に血が流れ込んでしまい痛みを伴った。


 右目が見えない状況で、腰に差してある二つ目の太刀を手に取り、再度清廉に斬りかかって来た。


 その間に清廉は、清明の落とした太刀を拾い、身を守るために反撃に転じた。


 だが今は左目しか見えていない清明の攻撃に、先ほどまでの正確性はなく。


 大きく外れた辺りに太刀が向かってきた。


 その際、清廉が身を守るために剣を向けたはずなのに。


 清廉の太刀が、清明の胸を深々と刺す結果となった。


 「兄上!」


 清明を斬った感触が、剣を通じ清廉の手にも伝わってきた。


 「兄上、まさかこんな……」


 経緯はどうあれ。


 理由は何であろうと。


 清廉は兄を斬ってしまった。
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