波音の回廊
 ここは当主の館。


 一番奥にあるのが当主の部屋。


 今当主は、「息子である清廉に毒を盛られ」意識不明の重態。


 だが医師団の懸命の治療で、快方に向かっているという。


 峠は越えたとのことで、医師団は休憩に入った。


 看護士である娘を、一人残して。


 「あなたも疲れたでしょう? ちょっと休んできなさい」


 「ですが、」


 「大丈夫よ。私がその間、殿の側についているから」


 七重の笑みに促されて、看護士の娘は少し休んでくることにした。


 部屋の中は、病床の当主と七重の二人きりになった。
< 188 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop