波音の回廊
 とはいえ。


 島の人々は、なかなか私たちの言葉を信じてはくれなかった。


 「津波? まさか」


 「何であんたにそんなことが分かるんだ」


 いちいち私が550年後から来たことを登場すると、混乱を招く可能性があったので。


 神のお告げがあったことにして、信じてもらおうとした。


 中にはこちらの言葉を信じ、避難の準備をし始めた人もいたけれど。


 「若様はご乱心なさって、殿や奥方さま、清明さまをお斬りになったそうじゃねえか。今度はわしらを集めて、お斬りになるつもりじゃねえのか?」


 すでに清廉が一族を皆殺しにしたというデマが、辺りに広まりつつあった。


 そのデマを信じ込み、清廉を恐れ。


 同時に恐怖の大王に恐れおののいていた者たちは、家を離れようとはしなかった。
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